ゆっくり急げ

XSR900乗りが、バイクのこととかそれ以外のこととかを書くブログ。

生まれ育った言葉は大切に。

 

先日、知り合いの若い上海人と話していた時、その人が言っていたこと。

「上海では、みんな外では普通話(中国の共通語)しか話さない。上海語は家の中だけで使う言葉。自分は、上海語は理解はできるが話すことはできない」

 

現在中国の人口は約14億人だそうです。これだけ人口がいれば、「中国語」がこの世から消滅してしまうことはないでしょう。しかし、この人が言うことが本当なら、上海語は50年もすれば母語として流暢に話せる人はほとんどいなくなってしまいます。

 

今日はそんな話。

  

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フランス語の否定と日本語の禁止。

 

昨日書いた Life is but a dream. の but の用法についての話の続き。

 

昨日の引用元のサイトには

 

短縮・省略現象としては,ne butan > but の変化は,"negative cycle" として有名なフランス語の ne . . . pas > pas の変化とも類似する.pas は本来「一歩」 (pace) ほどの意味で,直接に否定の意味を担当していた ne と共起して否定を強める働きをしていたが,ne が弱まって失われた結果,pas それ自体が否定の意味を獲得してしまったものである(口語における Ce n'est pas possible.> C'est pas possible. の変化を参照). 

http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2014-08-02-1.html

 

僕は大学時代に第二外国語でフランス語を取っていたので「なるほど」と思いました。

フランス語は否定文を作る時、動詞を nepas で挟みます。ne は英語では not 、 pas は引用文にあるように pace に当たります。

つまり、Ce n'est pas possible. を逐語訳すると *It not is pace possible. (→ It is not possible. )となります(ce は it 、 est は is に当たります)。

 

歴史的には、ラテン語の時代には否定辞 non だけで否定文を作ることができました。しかし、ラテン語からロマンス諸語に派生して行く過程で、否定辞と共に「小さいもの」を一緒に並べて否定を強調する用法ができたそうです。なので nepas は本来は「一歩も〜ない」くらいの表現だったのではないしょうか。小さいものと並べる否定は、フランス語には他にも ne pointpoint は「点」)がありますし、スイスで話されるロマンシュ語では「口」を表す語に由来する buc が否定辞として使われるようです。

 

ただ、 nepas があまりに一般的になり過ぎると、 pas が「一歩」という意味だと誰も意識しなくなります。その結果、引用文の最後にあるように、口語では本来の否定辞である ne が省略されるようになりました。

逐語訳すると本当に変な言い方です。*It is pace possible. で「それはありえない」を表すのですから。

  

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